海外ドラマ 『大草原の小さな家』

NHK総合テレビで、1975年から毎週土曜日午後6時から放送され、ファミリー層に人気があった『大草原の小さな家』を取り上げます。

米国では1974年からNBCでスタートし、全9シーズンが放送されました。

シリーズは米国の作家ローラ・インガルス・ワイルダーの自伝的小説を、ドラマ化したものです。基本的には、19世紀後半の西部開拓時代を舞台にしており、当時の風俗なども見どころのひとつです。

西部開拓時代を舞台にしているため、カテゴリーとしては西部劇ですが、そうしたウエスタンな雰囲気は希薄で、家族愛を描くドラマという印象が強い作品です。だからこそ、長い間、多くのファンに愛されているのだと思います。

主人公たちの一家は米国内を転々と移動します。ウィスコンシン州からカンザス州へ移住し、ミネソタ州に向かうまでが、パイロット版で描かれ、2話以降はミ ネソタ州のウォルナット・グローブが舞台で、第8シーズンまで続きました。最終の第9シーズン(なお、このシーズンのみ日本では『新・大草原の小さな家』 として放送)からサウスダコタに移っているようです。

物語の主人公はローラ。原作者のローラ・ワイルダーの自伝的小説が原作ですが、事実に脚色をかなり混ぜてあり、すべて実話とは言いがたいのです。
さらに、内容も時代的なことではなく、ローラの個人的なことが中心のため、本人の記憶違いもあり、どこまでが事実なのかははっきりしないというのが本当のところ。それでも、長くテレビシリーズとして続いたお話の元がどんなものか、興味深いものがあります。

そこで、今回は、「“真実”の『大草原の小さな家』」と題して、原作者ローラ・インガルス・ワイルダーが“小説に描いた”自らの生涯をたどってみます。

なお、TVシリーズをご覧になっていた方は、是非、TVの物語を思い出しながらお読みください。そして未見の方は、本稿で彼女の一家に興味を抱いたなら、是非、映像をご覧ください(以下、文体を変えます)。

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ローラ・インガルス・ワイルダーは1867年2月7日、父チャールズと母キャロライン・インガルスの次女として生まれた。当時、一家が住んでいたのは、ウィスコンシン州のビッグ・ウッドというペピンの7マイルほど北の場所。

1868年、両親はローラと3歳の姉メアリーを連れてビッグ・ウッドからミズーリ州チャリトン郡に転居する。

しかし一家はミズーリにも長く留まらなかった。これは、米国西部の未開発の土地1 区画 160 エーカー(約 65 ヘクタール)を無償で払い下げ、農耕地化し、5年滞在する条件で開拓を促進させるという、米国政府が制定したホームステッド法(1862年に制定)によるものだった。つまりインガルス一家は「自身の土地を持つ」ために開拓移民として転居したのである。このホームステッド法は別名・自営農地法とも呼ばれ、資金を持たない移民にとっては、願ってもない法律だった。

ローラの父親が開拓地として選んだのは、カンサスのインデペンデンスから12マイルの草原だった。 父親はそこに一軒の家を建て、隣人のエドワーズ一家の助けもあり定住する。後に、一家はマラリアにかかるが、タン医師の手で回復。医師は地域の医者として ネイティブ・アメリカンを診療していた人物。

ところが、一軒家を立て作物を植えるや、インガルス一家は1870年秋には土地を追われることになる。三女のキャリーが生まれた直後だった。父親は、政府 の方針が変わって農地開発を止めたと知る。政府は力ずくで入植者たちを追いだしたのである。 もちろん父親も黙って見ていたわけではなかったが、父は家族を昔のビッグ・ウッドの家に戻した。この結果、娘たちは祖父母、叔母、叔父に会う機会が増えた。ローラとメアリーはバリー・コーナー・スクールに通い、従姉妹たちと穏やかに過ごす。母親は帰還を喜んでいたが、父はまだ西部開拓を諦めていなかった。

1874年、インガルス一家は西へ旅立ち、ミネソタのウォルナット・グローブ近郊に小さな農場を手に入れる。一家は父親が手製の一軒家を建て終わるまで小 川の土手に穴を掘って住んでいたという。 ウォルナット・グローブでは、一家は教会に通った。ローラ、メアリーは再び学校に通い始める。そこで悪役のネリー・オウエンズが登場。
父親は農家として小麦を栽培し、一家はこれで落ちつけると思ったが、一帯にはイナゴ被害に悩まされていて、畑も全滅。翌年も栽培を続けるが昨年のイナゴの子どもが孵化し、やはり畑は全滅してしまう。

1875年11月1日、長男チャールズ・フレデリック誕生。その年の夏、一家はミネソタ東部にあるピーター叔父さんの畑に旅行。父も叔父の農場を手伝う が、生まれたばかりのフレデリックが1887年8月27日に病死。 一家は悲しみ、アイオワのバー・オークへ。父の友人のステッドマン氏の所有するホテルに入ることになり、両親はステッドマンのホテル業務を手伝う。

しかし、一家はホテルの仕事が合わず、食料雑貨店の建物の部屋をかり、今度は郊外にレンガ造りの小さな家を立てる。

1877年5月23日、バー・オークにて一家の最後の子どもグレースが誕生。以下はウォルナット・グローブの友人たちが懐かしくなり、1877年夏に戻る。チャールズは工事人などをしながら、肉屋を開店する。

ローラとメアリーは、自分たちがいない間にウォルナット・グローブがどうなったか知りたかった。ネリー・オウエンズには、学校教師の娘ジュヌヴィエーヴ・ マスターズというライバルがいた。ネリーとジェニーは女子のリーダーの座をかけて争うが、トップを勝ち取ったのは狙っていなかったローラだった。

1879年、メアリーは病気で失明。同年、一家はビッグ・ウッドからドーシアおばさんが来て、父にダコタ・テリトリーでの鉄道員の仕事を紹介され、最後の 移住を決める。 鉄道員の仕事が軌道に乗ると、一家は落ち着いた。友人のボースト一家とともに、一家は新しい町デ・スメットの最初の居住者となる。父とローラはもっと西に 行ってもよいと思っていたが、母は定住して子どもたちに教育を受けさせることを主張した。父はデ・スメットの南東3マイルにようやく160エーカーの土地 を入手したのである……。

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ドラマをご覧になっていた方は、テレビのストーリーが原作者ローラが描いてきた“真実”とかなり異なるとお気づきになったと思います。

ちなみに、ドラマのローラ役はメリッサ・ギルバートが演じていました。彼女は私生活では1988年にボー・ブリックマンと結婚(※TVムービーなどが多 く、日本ではあまりおなじみではない俳優ですが、俳優デニス・クエイドの従兄弟です)し、一児をもうけるも92年に離婚。その後、95年に『バビロン5』 に出演していたブルース・ボックスライトナーと結婚するも、現在離婚調停中です。

メリッサは2009年に「『大草原の小さな家』主演女優の半生記 「ローラ」と呼ばれて」を発表。アルコールやドラッグ中毒であった事を告白しています。この本を読むと、いかに俳優という職業が精神的に大変なものかが分かります。過去に実在したローラと同様、ローラ役のメリッサも波瀾万丈のドラマの主役でもあったのです。

なお、このシリーズは1975年に日本で『草原の少女ローラ』(全26話)としてアニメ化されています。そのアニメと実写を比べてみるのも、面白いかもしれませんね。